新プロジェクト「ARC’TERYX UNCOMMON」
第1弾アーティスト河村康輔インタビュー
「自由な作品づくりにより今までにない完成度の高いウィンドウアートに」
- 新プロジェクト「ARC’TERYX UNCOMMON」
アークテリクスがクリエイターとのコラボレーションによって、常識を覆すアイデアで人々をアウトドアフィールドへ導くための新プロジェクト「ARC’TERYX UNCOMMON(アークテリクス アンコモン)」が始動。その第1弾としてコラージュアーティスト河村康輔さんによるウィンドウアートが2023年6月16日(金)、「アークテリクス 東京 丸の内ブランドストア」と「アークテリクス 原宿ブランドストア」に登場。
中長期に渡って展開されるこのプロジェクトの全容と、今回のアート作品についての河村康輔さんのインタビューをお届けします。
- クリエイターの力を借りて多様な視点で人々をアウトドアに導くためのプロジェクト -
――アークテリクス マーケティングマネージャー
林 克洋
- クリエイターの力を借りて多様な視点で人々をアウトドアに導くためのプロジェクト -
――アークテリクス マーケティングマネージャー 林 克洋
「革新的なプロダクトを世に送り出して、人々にアウトドアの魅力を伝えてきたアークテリクス。今回、プロダクトとは別の側面や視点から、アウトドアフィールドへ行ってみたいという気持ちをインスパイアさせるためのプロジェクトとして『ARC’TERYX UNCOMMON』を立ち上げました。
第1弾は、ウィンドウアートで直営店を心躍る空間にすることに挑戦。今までは平面的だったウィンドウをより立体的にすることで、アークテリクスを知らない人やアウトドアに縁のない人にも「このお店は何だろう? 面白そう」と興味を持ってもらえればと。既存のものを破壊、分解して再構築していく河村さんの作風には、アークテリクスのものづくりとシンクロする部分があり、プロジェクトの第1弾を依頼。河村さんにはこの後も、秋、冬と半年にわたってウィンドウアートを手がけていただきます。秋には大阪心斎橋とGINZA SIXにも新たに直営店がオープンするので、4店舗での展開を予定しています。
今後は、例えばミュージシャンとコラボして、自然の音をサンプリングしたサウンドトラックで自然の中に誘うとか、料理家と山へ行ってみたいと思わせるような食べ物を考案してアウトドアへ連れ出すなど、いろいろなアイデアがあると思います。実験的な試みなので、コラボするクリエイターの間口は広く、プロジェクトがオーバーラップする可能性もあります」
KOUSUKE KAWAMURA INTERVIEW
店舗の個性にフィットするベストなアプローチで理想の作品を生み出す
――河村さんとアークテリクスの出会いについて教えてください。
アパレル業界にとてもお世話になっている先輩がいて、それこそ中学高校生の頃は雑誌で見ていたような人たちです。上京してから知り合ったんですが、先鋭的なものに敏感な彼らがアークテリクスのファンでした。いっしょにいる場でも「今回また新作を買ったんだけど」と披露しあって、盛り上がる姿をたびたび目にして。「僕も欲しいな」と憧れたんです。初めて買ったバックパックは、今も愛用しています。
――今回はプロジェクトのキックオフアーティストになっていただきました。
純粋にうれしかったですね。好きなブランドからのオファーいうこともありますし、ウィンドウアートということで、普段つくっている作品とは、別のアプローチができる点も魅力的でした。
――「アークテリクスのシーズンビジュアル写真を使用した作品を」というお願いの仕方でしたが、いかがでしたか?
ビジュアル写真を使って作品をつくるということ以外は制約のないオーダーでしたので、素材を見て即興的に組み合わせていくのが僕の手法がそのまま使えました。素材となる写真にはブランドのシーズンコンセプトがすでに落とし込まれていたため、僕は自由にコラージュすればよかったという。理想的なオーダーです。
――今回のアート作品を、原宿店は「ポスター・コラージュ」、丸の内店は「シュレッダー・コラージュ」と別々の手法にした理由は?
エリアや客層、使えるスペースも違うので、それらを鑑みてベストな手法を考えました。丸の内は展示スペースとして活用できる奥行きのあるウィンドウだから、それを活かして立体的な作品。逆に原宿はスペースが狭かったので、思い切って外側に設置するストリートアート的な作品にしました。同じアートでも原宿はより近い距離で見られるし、ポスターを持ち帰るという(店頭でポスターをプレゼント。なくなり次第終了)、プラスαの体験もできるようにしました。
「ポスター・コラージュ」
「シュレッダー・コラージュ」
――原宿店に展示されている作品は、とてもインパクトがあります。コンクリート調の土台の上にまた別のポスターが貼られていたような痕跡も残っていて、まさにストリートの印象です。
アメリカやヨーロッパでは、大きなポスターをストリートの壁に貼り重ねていくアド文化が定着しています。日本ではいろいろ規制があってストリートではできないのですが、今回、ものすごくリアルな完成度で実現できたのが、僕個人としてもとてもうれしいんです。
――ポスターが波打つように貼られていたのも、意図的なものですよね。
あえてきれいに貼らないことでノイズ感が生まれるんです。過去に何度か挑戦したんですが、成功したことがなくて…。今回は精度の高いスーパーチームが施工してくれたので、イメージした通りの仕上がりになりました。普通の日本の業者だと、どうしてもピシッときれいいに貼っちゃうんですよ。だから過去にはデータに波打ち感を入れたこともあったんですが、それってリアルじゃないよなーと(笑)。
――外に置くことで作品が雨風にさらされますが、そのあたりも想定内ですか?
ここから先は雨に濡れてはがれてほしいし、もっと波打ってほしい。紙が乾けばまた違う表情が生まれます。あからさまではなくても、太陽の光を受ければ刻一刻と色も変わる。約1か月展示されていくうちに、僕の想像を超えて、どんどん新しい変化が加わっていきます。屋外にあることで自然と共存しているのも、この作品に関しては正しい形なんです。
――今回のプロジェクトのテーマ、“HENNGE(変化)”につながるわけですね。
偶然性でしか生まれないノイズに、人は惹かれるんですよ。きれいに整頓されたものと、整っていないものが融合された街が原宿だと僕は思うので、アークテリクスのようなクリーンなギアやアウトドアウェアが並ぶ店舗の前に、ノイズ感のある作品をボンと置けたというのが、またよかったと思います。
「アークテリクス 原宿ブランドストア」ポスター・コラージュ
――丸の内店は、奥行きのあるダイナミックなレイアウト「シュレッダー・コラージュ」。そして、裏側のまったく雰囲気の違う、モノトーン風のビジュアルに驚きました!
それが一番の褒め言葉ですね。もともと両面とも見えるので、両面見られるようにしたら、二度おいしいしだろうと(笑)。裏面のメインで使った写真を初めて見たときに、地球ではないどこかの惑星に人がいるように見えたんですね。それで表側の、地球を抱えているビジュアルと連動させて、裏側はSFっぽく蜃気楼のような雰囲気でつくりました。
「アークテリクス 東京 丸の内ブランドストア」アート店内側
――そうやって作品のアイデアがふくらんでいくんですね。
丸の内店のディスプレイもCG状では立体にした状態を何度も確認していたんですが、実際に設営された作品を見たときには僕も感動しました。
――丸の内店の作品には、クライマーが地球を抱えているビジュアルがメインに使われていますね。地球を組み込んだ意図は、何でしょうか?
アークテリクスが自然とともにあるアウトドアブランドだからです。サステナブルな取り組みも、いち早くしている印象がありました。それで地球をコラージュしました。
――地球を抱きかかえて、守っているような意味ですか?
それに近いですね。僕の中には「地球を借りて住んでいる」という感覚があります。子どもの頃にアニメで見た影響かもしれません。宇宙にはいろいろな星がありますが、どれひとつとしてそこにいる生命体がつくったものはありません。僕らは借りて住んでいるのに、あちこちの自然を壊してしまって…。賃貸の家に穴をあけられたら怒るのは当然ですよね。そういう気持ちはずっとあるので、借りているんだからちゃんとしなきゃと思います。
「アークテリクス 東京 丸の内ブランドストア」シュレッダー・コラージュ
――このプロジェクトは秋、冬と続いていきます。秋からは作品を展示する店舗は更に2店舗増えて4店舗になります。現在どのような展開をイメージされていますか?
夏と同様にビジュアル素材は同じで、店舗によって、つまりその土地、人の特性、ディスプレイ場所の環境によってアプローチは変わると思います。4か所どこへ行っても、また全部回っても楽しめるような作品にしたいと思います。
――最終的な展示設営を施工チームにゆだねている分、河村さん自身も期待がふくらむ部分があるようですね。
作品をつくるときにディスカッションからスタートすることもあまりないので、そこがまず新鮮ですし、作品の最後を任せられることもないので、やっぱりワクワクしますね。このプロジェクトは、僕にとっても楽しみがもう一段階ある感じがします。
≪河村康輔氏プロフィール≫
コラージュアーティスト、アートディレクター、グラフィックデザイナー。多数のアパレルブランドにグラフィックを提供する傍ら、ライブ、イベント等のフライヤーDVD/CDのジャケット、書籍の装丁、広告等のデザイン、ディレクションを手掛ける。ジャンルを横断したコラボレーション多数。国内外の様々な美術館やギャラリー等で個展やグループ展を開催。大友克洋原画展メインビジュル、Katsuhiro Otomo x Kosuke Kawamura 「AKIRA ART WALL」など、様々なコラボレーション、アートワークを提供。ボイマンス美術館(オランダ・ロッテルダム)に大友克洋氏との共作が収蔵。
「アークテリクス 原宿ブランドストア」
ポスター・コラージュ
「アークテリクス 東京 丸の内ブランドストア」
シュレッダー・コラージュ