Vol.6
山梨編
【早春の瑞牆山と絶景の里山】
ARC'TERYXが日本の美しいフィールドを紹介する「Backyard」。今回、山梨県の魅力的なフィールドをナビゲートしてくれるのは、甲府のアウトドアショップ「ELK(エルク)」スタッフのお二人。
山梨に暮らし、地元のフィールドに足繁く通うお二人が選んだのは、日本百名山として人気の「瑞牆山(みずがきやま)」と、山梨県民が愛する絶景の里山「武田の杜(もり)」です。まだ雪を残した富士山、南アルプス、八ヶ岳の景観に囲まれながら、清々しい早春の山梨の山を楽しみました。
Part.2【絶景の里山・武田の杜】
甲府市街から南アルプスが一望のもと。身近なトレイルと大パノラマ
観光案内に載っていない絶景の里山
ELKのお二人が次に案内してくれたのは、絶景の里山。山梨県の観光案内にもほとんど載っていない、けれども、トレイルは変化に富んで飽きないし、上部からは大パノラマが広がる。これには驚かされた。
まさに甲府市民の裏庭(Backyard)。それがこの「武田の杜」だった。
場所は甲府盆地の北の端、入山口はいくつかあるが、麓からなら甲府駅からクルマで10分ほどにある「緑が丘スポーツ公園」。あるいは、上部の「健康の森」内にも駐車場がある。いずれも甲府の市街地から至近で、山梨の山好きには欠かせないフィールドとのこと。
「山に入って1、2時間で往復することもできるし、距離を延ばせば1日掛かりでハイキングを楽しむこともできる。ハイキングやトレイルランはもちろん、クライミングができる岩場もある。老若男女さまざまな人が、いろいろな遊び方のできるフィールドです」
序盤から中盤は快適なトレイルに足取りも軽い
眼下には甲府市街、富士山から南アルプスが一望のもと
緑が丘スポーツ公園の駐車場をスタートすると、しばらくは遊歩道が続いており、30分ほど歩くと標高446mの湯村山。ここには武田信虎が築いた山城跡があり、のろし台が復元されている。
ここからアップダウンを交えて、小さな祠が祀られた八王子山のピークまでは小一時間ほど。平日の昼間というのにすれ違う人もそこそこいて、ゆっくり登る人と、走る人がうまく共存している印象だ。
「トレイルランニングの大会に出ているときは、朝の時間や、店を閉めたあとに練習に行っていました。クルマを停めてシューズを履き替え、トレイルを駆け登ってから千代田湖まで下り、湖畔を2周くらいしてから戻ってきて2時間少々。距離でいうと14、15kmくらいでしょうか。けっこういいトレーニングになるんですよ」と中込さん。
ピークに近づくにつれ傾斜が増し、石段も増えてくる
変化に富んだ美しいトレイルは、走っても歩いても楽しい
山頂から尾根を左手に少し下ると、甲府盆地を一望できる展望スポットがある。露岩が突き出たわかりやすい地点だが、名前は特にないらしい。眼下には甲府の市街地が広がり、奥には雪を抱いた富士山が背を伸ばし、右手には甲斐駒ヶ岳まで連なる南アルプスの山並みが一望のもと。
毎年川の氾濫に苦しめられた武田信玄が築いた堤防が、有名な「信玄堤」。その位置を決めるために、信玄公が自らこの岩に登って指図した、という伝承があるという。真偽はともかく、甲府市街を眺めるには最高のスポットであるには違いない。なお、岩の向こう側は切り立っているので、ELKのお二人のように岩に立ち上がるときにはご注意を。
信玄公ゆかりの岩から甲府市街を見下ろす。夜には宝石を散りばめたような夜景が広がる
毎週土曜の朝は「ユムラン」
ELKが毎週土曜の朝に開催しているグループラン。武田の杜にある「湯村山」を駆けることから、その名も「ユムラン」。もともとは、自宅が近い「ELK」オーナーの柳澤仁さんが自らのトレーニングとして店の常連さんを誘って走り始めたのがはじまり。以来、10年間、毎週土曜の朝6時半に麓の駐車場に集合し、事前予約も参加費も不要。「特に決まりはないんです。朝、みんなで挨拶して、あとは思い思いに山を走ったり、歩いたり……」と中込さん。写真のこの日はサロモンのトレイルランニングシューズの試履会も開催されていた。
アウトドアショップ「ELK」、40年のこだわり
「山が好きならアウトドアショップ勤務は楽しい」という綾井さんと中込さん
周囲を山に囲まれた甲府は、富士山、南アルプス、八ヶ岳、奥秩父の各登山口へ小一時間以内という山好きには恵まれた土地だ。そこでELKを立ち上げ、40年にわたって山梨の登山者やアウトドア好きを支えてきたのがオーナーの柳澤仁さん。
その柳澤さんを語るうえで欠かせないのが、リペアサービス。ELKでは創業以来、ほとんどの製品の修理を引き受けてきた。ウェアやバックパック、登山靴はもちろん、テントやランタン、バーナーなど守備範囲は幅広い。そして、修理を一手に担当しているのが、実はオーナー自身である。そんな柳澤さんに話を伺った。
修理に欠かせない360度方向に縫える「八方ミシン」を扱うオーナーの柳澤 仁さん
——メンテナンスサービスを始めたのはいつからですか?
「この店を始めたときからです。昨年の10月で40周年になりましたので、修理は40年前からやっています」
——専門店でも少なくなってきた修理を今も続けている理由は?
「やはり、こだわりですね。売ったからには責任といいますか、『終身メンテナンス』という言葉をあえて使いたいと思っています。たとえば、ミシンで縫えば10分でできる修理が、メーカーさんに送ると2週間も3週間もかかって、修理代に運賃もプラスになるじゃないですか。ここで買っていただいたものは、なるべくここで修理をして、できるだけ早くお客様が使えるように、という思いでやっています」
古いバーナーをメンテナンスする。30、40年前の製品でも予備パーツや修理マニュアルはほとんど取り揃えてある
——修理を続けていて良かったことは?
「それはもうお客様が喜ぶ顔を見たときです。つい最近の話ですが、38年前にウチの店で買ったというクライミングパンツを持ってこられた方がいました。膝が少し破けたので、そこを縫ってほしいと。38年前の製品をいまだに使っていて、それを直して使いたいと言うのですよ。驚かされましたし、その気持ちが非常にうれしかったですね」
——オーナー自らが修理を手がけている理由は?
「昔はアイテムも少なかったから、お客様に合わせてカスタマイズすることが当たり前でした。小柄な女性に合わせてバックパックのウエストベルトを短くしたりとかね。当然、そうした技術は店のみんなには伝えたいと思っていますが、すぐにできるものでもない。40年やってきたことなので、伝えるには時間がかかりますよね」
——修理を続けていて良かったことは?
「それはもうお客様が喜ぶ顔を見たときです。つい最近の話ですが、38年前にウチの店で買ったというクライミングパンツを持ってこられた方がいました。膝が少し破けたので、そこを縫ってほしいと。38年前の製品をいまだに使っていて、それを直して使いたいと言うのですよ。驚かされましたし、その気持ちが非常にうれしかったですね」
——オーナー自らが修理を手がけている理由は?
「昔はアイテムも少なかったから、お客様に合わせてカスタマイズすることが当たり前でした。小柄な女性に合わせてバックパックのウエストベルトを短くしたりとかね。当然、そうした技術は店のみんなには伝えたいと思っていますが、すぐにできるものでもない。40年やってきたことなので、伝えるには時間がかかりますよね」
「お客様がこだわって選んだ製品だから、誠意を持って直したい」と語るオーナーの柳澤さん
——40周年を迎えた今の実感はいかがでしょう?
「10坪くらいのお店をはじめたのが40年前。あっという間に40年ですよね。とはいうものの、根本的に野外活動というのはほぼ変わらないと思っているんですよ。だから、たかだか40年だと自分では思っています」
——最後に、これからのELKと柳澤さんのビジョンとは?
「私たちが昔から自然に関わっているうえで、今までやらなかったこと、伝えなければいけないことがいっぱいあって、それを伝えるのが使命かなと思っています。当然、年を取ると体力的にも厳しくなってきたりするんですけども、想いは変わらないと思うんです。だから、そこを強く伝えていきたいなと思います」
日本の名山が揃っている山梨
山梨県の山と言われて、すぐに名前が浮かぶ山がいくつあるだろうか。実は山梨には錚々たる顔ぶれの山が並んでいる。南アルプスでは甲斐駒ヶ岳や鳳凰三山、白根三山。八ヶ岳では赤岳以南、瑞牆山や甲武信ヶ岳など奥秩父山系から大菩薩嶺。そして日本一の富士山が控える。まさに日本を代表するような名山が揃っている。
その中心に位置するのが、ELKのある甲府市。これまではあまり意識したことがなかったが、実は登山好きにとって絶好の環境であり、それを教えてくれたのが今回のアウトドアショップELKのお二人だった。
「楽しみたくて来店する方の接客だから、楽しくないはずがない」という綾井さん
山に登ったり、フィールドで遊ぶことを楽しみ、道具も仲間も大切にする。そんなスタッフが揃うアウトドア専門店は間違いがない。中央自動車道で山に出かけたときには、帰路にでも甲府昭和インターからわずか数分のELKに立ち寄ってみてほしい。中込店長と綾井さんを筆頭に、ELKのスタッフさんはもれなくフレンドリーで話し好きだから、ウェアやギア談義はもちろん、山梨の山について気の済むまで話してくれるに違いない。
ELKスタッフのおすすめ
元祖手打ちほうとう「金峰(きんぽう)」
山梨といえば「ほうとう」。注文を受けてから一品ずつ切るというモチモチ麺は、地元の農家が無農薬栽培した小麦を使った自家製麺で、すべて無添加。コシがあって濃密かつ優しい手づくりの味わいは、街道沿いの大型店では出せない味。地元の人がわざわざ食べに来るというのも納得だ。ELKから近く、店主は熱心なトレイルランナーでもある。
■営業時間 昼:11:00~14:00、夜:17:00~20:00
■定休日 毎週日曜日、第3月曜日
■アクセス 中央自動車道甲府昭和ICからクルマで約5分
山梨県甲府市徳行1-13-18
■連絡先 https://houtou-kinpuu.com
アウトドアショップELK